ここ士別地方においても、2年ほど前に、BVD-MDの持続感染牛(PI牛)が、公共牧場において摘発されてから、酪農家、獣医師が関心を持つようになりました。私も今回のことで、BVD-MDに関して少々勉強しました。以下、かいつまんで私がなるほどと思ったことを列挙したいと思います。
PI牛の約半分は、正常である。
PI牛をイメージする時、削痩、皮毛粗剛、軟便など、学生時代に白黒写真で見た貧相な牛を想像しますが、現実はまったく違い、正常な牛も半分ぐらいはいるということです。実際、摘発されたPI牛を見ても、少し痩せぎみかなぁと思うか、生まれたばかりのPI牛に至っては、普通の牛と見分けがつきません。しかも、妊娠も可能で、牛によっては何産もするPI牛も現実には存在します。
BVD-MDのMD、すなわち粘膜病は、PI牛しか発症しない。
BVD-MDウイルスの、増殖部位はリンパ系組織である。
そのため、感染牛は免疫力が低下する傾向がある。多頭飼育の肉牛牧場に、PI牛が持ち込まれウイルスが大量に暴露されると、免疫力が低下し事故率が増加する。今までは、酪農家の妊娠牛が流産するということでしか、問題意識がありませんでしたが、肉牛農家にとっても大変重要な問題であることがわかりました。今まで、PI牛のホル雄、F1が、どれだけ肉牛牧場に引き取られて行ったのでしょうか?もちろん、今でもその流れは、なんにも変っていません。
BVD-MDウイルスには、たくさんの種類がある。
Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型などは、まだわかりますが、Ⅰa、Ⅰb、Ⅱa,など亜種と言われるものがたくさんあり、ワクチンの交差性があったりなかったり、症状が違ったり、BVD-MDウイルスと言っても、人間と同じようにそれぞれ個性があるということです。PI牛がいたとしても、それほど妊娠牛に被害がない場合もあります。伝播力が弱い株もあるということなのかもしれません。
BVD-MDウイルスのPCRによる検査には、日本で統一の方法があるわけではない。
検査機関がそれぞれのプライマーを使って、自由に検査をしているというのが現状らしいです。しかも、検査をする人間の技術、考え方が検査結果にもかなり影響を及ぼすということもわかりました。陽性の判定は信用できますが、陰性の判定は100%は信用できないということです。多量のウイルスが存在していれば、容易にPCRによって増幅できますが、バルク乳のような微量しかウイスル量がない場合は、技術者の力量によって検査結果に差がでる可能性も否定できないということです。
いい勉強になりました。
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